夜のピクニック

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

■ようやく文庫化されました、ってことで書店で見かけ購入。恩田陸は好きだなぁ。
恩田陸定番の学園モノ&青春友情モノ。良かったです。かなり期待して読んだので期待を超えるではないけど、期待通りには楽しませてもらいました。恩田陸はこういう雰囲気の文が上手いですね。
■抱えてる問題はシリアスなんだけどどこかほんわかな雰囲気が漂ってるのは、描かれる友人たちがとても魅力的だからでしょうか。歩行祭という特別な出来事とそういう時だから可能な交流、って具合がとても素敵です。こういうことってあるよなぁと納得できる感じ。自分はもう高校生では無いけれど、何か戻りたくなってしまいました。子供なのか大人なのかその微妙な感じが良いよなぁ。
歩行祭の特別さ、集団を描いてくところが見事です。集団という意味で「球形の季節」の最後の方の体育館でのシーンを思い出しました。あれは非常に怖いシーンで、この本はそういうことは無いんだけど、集団になったときの心理かな、そういうものが上手く書かれてます。そしてその中でさらに書かれる人間関係がまた良い。みんながみんな良い人ではないけれど、みんながみんな魅力的です。
■それから、あまり引っ張らない展開が好きです。さくさくとことは進んでいってしまう、そしてその中で焦ったり悩んだりする、ってとこが読みやすいし、設定にあってます。時に他愛もない会話も交わされるんだけど、そういうところまで良い雰囲気を作ることに手伝っています。
■自分の中ではこの歩行祭にあたるイベントが学校祭だったと思います。本当に不思議でああいうイベントがあって普段一緒にいないような時間まで学校に残って、学校から帰るときに友達と星を見上げたりすると、素面ではとても言えないような会話が交わされたりするんです。多分誰にでもそういう記憶ってあると思うのですが。妙に美化された繊細な記憶です。そういう忘れてた訳ではないけど、頻繁に思い出すわけでもない記憶を引っ張り出してくれる本でした。…残念ながらうちの高校は色恋沙汰はあんまり無かったんだけど。
■どうでも良い話だけど、忍がかっこいいよね。私が彼らの友達だとしたらたぶん好きになっちゃうんじゃないかな。飄々とした人好きー。高校じゃないけど中学のときに何となく好きかもしれなかったクラスメイトを思い出した(笑)

前に読んだ恩田陸の感想一覧
ねじの回転 - 歩くパンケーキたち
図書館の海 - 歩くパンケーキたち
メイズ - 歩くパンケーキたち
六番目の小夜子 - 歩くパンケーキたち
球形の季節 - 歩くパンケーキたち
ネバーランド - 歩くパンケーキたち

★★★★☆