重力ピエロ

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)

新潮文庫の100冊、今年もパンダが可愛いなぁ…と、でもそろそろネタ切れな100冊。最初にこのよんだぱんだ企画が始まったころから追いかけてるんだからね…。読んでない≒読みたくない、な状況です。
■が、パンダは欲しいなぁ、ということで、以前読んで合わなかった印象のある伊坂幸太郎に挑戦。なんというか面白みの無い文という偏見があります。
■ですが、せっかく読むのだから偏見はできるだけ排除して、読みました。
■けれど、やっぱり無味乾燥な文という印象を持ってしまいました。東野圭吾にもそんな印象があるのですが。最近売れてるけどこのような作家とは合わないのかも。文章は非常に読みやすいのだけれど、誰にでも書けるような文章な気がします。物語を伝えるって意味では確かにその無記名な文章は正しいのかもしれませんが、私は読んでて文そのものが楽しい本が好きなので(同じこと前に書いてる…進歩が無いね…)。
■読みやすいことは確かなので、面白みが無いなぁと言いながら、1日で読み終わりです。そして確かに先が気になるのです…。中盤までミステリーとして引っ張る力があるのは間違いない。ただ中盤以降それがとーっても計算されたものに見えてくる。さっき見直したら「オーデュボンの祈り」を読んだ時にも書いてたけど、あまりに予定調和。っていうか言ってしまえば、伏線が見える。最低限の登場人物に削ぎ落としてあるからかもしれないけれど。普段はあまりそういう読み方をしないで素直に騙されるんですが、これは見える…。困ったなぁというところです。
■でも、とてもつまらないかというとそうでもない。登場人物は割りと魅力的です。設定も。でも何か全体的に短絡的っていうか…。前半は良かったのですが、後半は段々彼らが人間じゃないような感じがしてきました。一応悩むんですが、悩み方が機械的と感じるのは私だけ?ぴったり来る言葉が「計算されている」ってところ。作家の内側から溢れてくるものじゃなくて、落ち着いてこう書こうという方向性の上で書いている感じがします。勝手な認識ですが*1。特に主人公兄弟。父と母と探偵さんは魅力的でした。作られたっぽいのは確かなんだけどあそこまで行くとキャラクタリスティックで楽しめるので。
■おかげで落ちも上滑りでした。簡単に読めすぎるのも良くないんだろうなぁ。不快ではないけど「あっそう」ってラストです。
■1つだけ、「自分で考えろ!」は印象的だった。それが無かったら★1つかも。父さんの力。
■書き忘れた。これは私の知識不足でそのせいで作品が詰まらなくなってるかもしれない。今作はとても有名な作品への引用が多いのだけど、半分くらいしか分からなかった。全部聞いたことはあるんだけど中身までは…って位に。その辺で深みが違っちゃってるのかな。…もしかして、あくまで期待を込めて。…だってこの本かなり評価高いんだもの。私の感覚が変?
■ああそうそう、仙台の「中にクリームの入った黄色いお菓子」は大好きです。今度買って食べよう。

★★☆☆☆
■前の感想↓

オーデュボンの祈り - 歩くパンケーキたち
むかし僕が死んだ家 - 歩くパンケーキたち
変身 - 歩くパンケーキたち

*1:森博嗣もそうかもしれないけど不思議と好きです。この差が何か分からない。作家が楽しそうかどうかかなぁ?