ミュンヘン

ミュンヘン:公開からしばらく経ってしまいましたがミュンヘン観てきました。スピルバーグということで期待半分くらいで。
■結果、面白かったです。万人に勧める気は起きませんが、私は好きです。ゾクッとするものを感じました。実話を元にしているということで淡々としていますし残虐で非情です。でもそこに私は動揺し感動しました。特に最後の方のアブナーが飛行場の事件を見るところが今まで観たどんな映画のどんなシーンよりも怖かったです。引き金を引けば本当に簡単に人は殺せます。でもそこには深い恐怖が眠っている。そんな感じでした。
■恥ずかしながらミュンヘン事件のことはこの映画を見るまで全く知りませんでした。一応観る前に映画のサイトで事件のあらましくらいは読んで行きましたが。1970年代の事件、でも2006年になった現在も血で血を洗う戦いは終わる気配がありません。戦いを続けるのは本当にバカだと思っていましたが、この映画をみてその心も少し、分かる気がしました。気がしただけです。アブナーとPLOのメンバーが階段で話す場面の「何年かかろうと自分たちの国を作る」という言葉がそれを表しているのだと思います。生まれた時から何の疑問もなく日本という国のある私には分からないのかもしれません。いっそ日本なんて無くなってしまえば良いのではないかと思う程なのに。でも映画を観ていて民族を愛し国を求める心が少し見えた気がします。それが正しいわけではありませんが。
■アブナーを中心としたメンバーの人間も面白いです。前半はあまり感情の動きの見えない映像作りなのですが、殺しが始まって、淡々としていたものが段々形になっていく様は怖かったです。最初に引き金を引くときのアブナーの躊躇いと、「ここは欧州だが戦場だ」という言葉。戦場であれば殺人は罪ではない、そのことが当たり前ながら恐ろしかったです。そして自分が殺される側になっていくのも。結構良い演技をしていたと思います。スティーブやカール、ルイの演技も良かったです。ルイなんてあんなに出張ってたのに公式サイトに名前無いよぉ。どこかで見た気がするのに誰だか分かりません。
■正直、人のつながりがわかり難かったり、場面が飛びすぎてたり、細かいところで矛盾もある映画のような気がしますが、そんなことはどうでも良い映画だと思います。さすがスピルバーグで場面場面安定していて安心して観ていられるし、そこから伝わるものがあればそれで良い気がします。そうそう、音楽もとても良かったです。サントラ聞きたい。
★★★★☆