「少年A」14歳の肖像

「少年A」14歳の肖像 (新潮文庫)

「少年A」14歳の肖像 (新潮文庫)

■あまりこのようなドキュメンタリーのような創作でない作品は読まないのですが、ちょっと最近物語に倦んでるので。
■結構前に神戸であった酒鬼薔薇聖斗の殺人事件をまとめたもの。2冊目らしいのだが残念ながら前作「地獄の季節」は読んでいないです。この事件のことはニュースで報道されていたのを聞いていたことくらいしか明確には記憶に無い。確か小学生だった。後に自分たちが14歳になったころ、「14歳では殺人事件を起こしても死刑にはならない」と報道されたことを思い出し、「何かするなら今のうちだよねー」とか(不謹慎だが…)冗談を言ってたことを思い出す。今振り返ってみて凄い事件だったんだなぁと感じた。何だろう…ひょっとしたらだが、村上龍の「希望の国エクソダス」のナマムギの事件のような、そんなキッカケにもなりえるような、と言ったら言い過ぎかもしれないけれど、この本を読んでたらそんな気さえしてきました。良い悪いは別にして。
■「少年A」が酒鬼薔薇聖斗になりえたのにはやはり理由があって、究極的には本人しかわからないのだろうけれども(本人にもわからないかもしれない)、この本は良いところまで近付いているのではないかと思う。やはり人格を形成するのは家庭だろうし、そこにすべての原因は無いにしろ、家庭環境、学校、周囲の目に近付いてみることは彼の心を理解するのに重要なことだろうし。まぁ実際のところどこにでもありそうな家庭であるような気がしたし、また同じ環境で育てられたら誰もが殺人鬼になるわけではないでしょうが。
■少年Aの心は分かるような気もするし分からないような気もする。何故彼は人を殺すことの空しさに先に気がつけなかったのだろう。サイコパスとかそういうのとはちょっと違う気がするし。
■それから読んでて思ったのが結局精神分析って空しいよなぁと。誰かを救うことができるのか。結局は彼のことは理解できていない、というか人の心を他人が理解なんてできない。無力ではないかもしれないけれど、未然に防ぐことができていたら…と思ってしまう。
■ところで、少年Aはもう出てきてるのでしたっけ?彼はこの後どう生きるのか。彼の家族はどうしたのか。殺された遺族はどう思うのか。やっぱりやってしまったことは取り返しがつかないですね…。
■一応、冤罪説というのがあるようで。全部は読んでませんが参考までに→酒鬼薔薇聖斗は少年Aではない…と思う。
★★★☆☆