笑わない数学者

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

■さてさて今日も森博嗣です。ちょっと読み易すぎるんじゃ?と思うほどサクサク読んで3冊目です。
■今回のテーマは数学…というか哲学ですね。数学は突き詰めれば哲学だっていいますけれど正にそんな感じ。内側と外側は定義次第、これはトポロジーですよね?うーん、違う?すごく理論的なことを積み重ねているのに、ファジーな物語りだなぁと思いました。何か、作品中にも何度も出てきますが、星空をこう見上げた時のグルグル回る感じ、そんなでした。
■トリック自体は納得するけれども、「えぇ?」という驚きは無いかと思います。私は好きですけれど。この話の肝はきっとそういうところじゃないんだろうなぁと。やっぱり人間かなぁ、そしてその人間の世界へのアプローチ、そんなところじゃないかなと思います。私はそんなに頭は良くないですが天王寺翔蔵博士に会ってみたいです。会ってくれなさそうです、が。
■ところで、タイトルいいですね。笑わない数学者。もうこの響きが。
■そういえば、犀川がどんどん可愛くなっているような気がする(笑)。最後にどのような判断を下したのか、非常に気になります。
■そうそう、私は数学好きです。…一時は大学は数学科に行くつもりでした。実学のほうに興味があったので今は工学部ですが。もっとも大学の数学は理解を超えるので良い判断だったのかもしれません。で、この本の中に出てくる5つのビリヤードの玉の問題。思わず、本を一時閉じて考えてしまったのですが、この本の中に答えは出ないのですね。何となく勿体無いので、答えみたいな、を書いてみる。良いかわからないので、続きを読む、で。
★★★★☆
■ええと。最初は適当に総当りみたいな手法で行こうかと思ったのですが、物凄い数があることに気がつき、一応数学的に(算数的に?)考えてみました。
■ポイントは1から21までの数を作る=21個の数を作れなくてはいけない、ということだと思います。
■まず、5つの玉で作れる数を考えてみます。1つの玉の取り方は5通り、2つの玉の取り方は5通り(数えました)、3つも同じく5通り、4つも5通り(これらは1つの場合と2つの場合の裏です)、そして5つの取り方は1通り。よって5+5+5+5+1=21。つまり21の数を作るためにはそれぞれの数は1回ずつしか出てこれない。さらに言えば同じ数字は2個以上使われない。
■したがって、1と2は絶対に使われることが分かります。また、21個しか数が出てこないので5つの玉の合計は21でなくてはいけません。
■で、ここからは何ともいえないのですが、きっと数学的解きかたがありそうだと思いながら総当り的に。
■とりあえず、1と2を隣り合わせにしてみました。とりあえず1、2、3はOK。で4を作るときに、1や2から作ろうと思うと3(既に作っている)か2(もう使っている)を使うことになってしまうので4という玉が必要です。で、4をあちこちに置いてみて、数を数えていって、できない数が出てきてたところで4つ目の玉を決定→21から引いて5つ目も決定。のように数えると、これはどうしてもダメそうです。
■なので、別の手へ。次は1と2を放す。そうすると3ができないのでどこかに3の玉を入れなくてはならない。で、3を1と2のすぐ間に入れるか、それとも逆側の2つ余地があるほうの1側に入れるか、2側に入れるか、の3通りであることが分かります。それで、これも上と同じように総当り。何とも頭が悪いですが幸いパターンは少ないので答えに出会えました。
■以上から答えは1、3、10、2、5(反転してます、ドラックで)という輪になります。うーん、すっきり。私はもちろん紙(ブックカバー)に書いて解いたのですが、これを頭の中で解く、犀川たちの面々はすごいなぁと思う次第です。しかも、この手法では4個の玉の時はまだしも6個7個…n個となった時は想像すらしたくない話です。
■同じようなことしてる人がいました→『笑わない数学者』の謎を解く:図を使われているので上のより分かり易いと思います。しまった…存在意義が…。でも、私は像が消えるトリックの方が難しいと思います。これはそんなに難しくないのでは、と。