希望の国のエクソダス

希望の国のエクソダス (文春文庫)

希望の国のエクソダス (文春文庫)

村上龍は嫌いでした。が、この間呼んだ村上龍の「空港にて」がヒットだったので、後書きの文で気になることが言われてたので、読んでみました。うーん、ヤバイ。何で、今までこの作家を敬遠してたんだろうか。面白かった。ちょっと他の作家には無い、似非現実なファンタジーな現実に惹かれました。
■非常に面白い本です。けれど、あまりに見事に書かれているので、しかも経済関係への自分の知識が薄すぎることもあって、現実のように思えて、日本の未来を見てたらどうしようと思ってしまいました。しかもそれを中学生に気づかせられるような。

学校では、どういう人間になればいいのかわからなくなるばかりで、勉強しろ、いい高校に、いい大学に、いい会社に、いい職業に、ってバカみたいにそればっかり。幼稚園、小学校、中学校と進むうちに、いい学校に行っても、いい会社に行っても、それほどいいことがあるわけじゃないってことがよほどのバカじゃない限り、わかってくるわけで、それじゃその他にどういう選択肢があるかということは一切誰も教えてくれない。

■使い古された内容です。でもこんなにスッと自分の中に入ってきたのは初めてです。別にそんなこと考えながら勉強したり受験したりしてきたんじゃないけれど、何か印象に残る言葉でした。それから、最後に書かれている欲望についての内容も気になりました。希望と絶望と欲望と空虚。突き詰めていけば人間って何なんだろうということにでもなるのでしょうか。
■そもそも、この言葉を求めて、読み始めたのでした。

この国には何でもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけが無い。

■この言葉は必要十分に書かれていました。はっきり言ってそれだけでもう目的は達せられたのですが。この言葉を聞いて、日本を見たらニュースを聞いたら、今までとは少し違う印象を受けた、そのことが怖いです。自分は本当にいろいろなものを見ずに生きてきたんじゃないかと。無知ということは恥ずかしいことであると同時に幸せでもあるんだなぁと。生温いね。ポンちゃんたちは目を逸らせなかった。それはカッコイイし、正しいけれど、私にはできない。それは私が中学生ではないからかもしれないし、確かにあの頃嫌悪してた面白くも無い大人になったからかもしれないし、ポンちゃんたちとはちょっとだけれど世代が違うからかもしれない。
■でも、確かに、この国には希望はありませんね。特に単一的な希望は。そもそも単一な希望が持てるなんて、私は一度も教えられたことは無いし、感じたこともない。ニュースで報道されるのは本当にバカらしいことばかりで。郵便局を民営化する前にもっとしなくてはいけないことが沢山あることは誰の目にも明らかなのにそれを無視する政治家がバカに見えたり(実際違うのかもしれませんが)、プロ野球のオーナー会議なんてどうでも良かったり(好きな人にはどうでもあるのか)。この国を捨てたくなる気持ちは大いにわかります。しかし、私が考えるのはせいぜい移住しようかくらいで、この国の中で何かしようという気にはなれないのです。しかし、そういう人間ばかりでは、日本は潰れる、そう言われているような気がしました。
■面白いんだけれど恐怖を感じるそんな本です。10年後、20年後、この本を笑い飛ばせるような現実があれば良いのですが。
★★★★★