球形の季節

球形の季節 (新潮文庫)

球形の季節 (新潮文庫)

■なんとなく、こないだ読んだネバーランドが良かったので、第2弾。…読んだことあるのかもしれない…。本屋でペラペラとめくってみた時は、知らないと思ったんですけれど。読んでても初めて読む感覚だったのですけれど。時々、場面場面で「知っている」感覚があった。妙にリアルな触れるような。風景が記憶にあるのです。例えば、金平糖が初めて落ちている場面で。例えば、ブランコが揺れている場面で。何度もあるのに、ちっとも先が思い出せなくって。読んでて切迫感みたいなものがあったのです。きっと結構前に一度だけ読んでるのだと思います。これで読んでなかったら相当怖いのでそうだと…たぶん。それだとしても記憶力無さ過ぎる。ぼぉーっと生き過ぎるとダメですね。
■そんなわけで。ちょっと冷静に読めてたのかの自信が無いです。しかし、妙な感覚を差し引いても場面描写はよく出来てると思いました。私が東北出身なせいかもしれませんが。岩手じゃないけれど。人間の感情もわかる。敷かれたレールに絶望しながら、でもレールが無くなることを怖れているんです。子どものころあんなに欲しかった自由が今はいらない。いつの間にか埋没していくことのほうを望む人間になっている。自分が特別じゃないって気がついたのはいつだろう。そんなすごく現実的な物の中に、段々異質な別世界が紛れ込んでくる。その感覚が心地よかったです。ホラーでは無いけれど、もっと怖いですね。
■しかし、ラストは少し尻切れトンボな気分でした。残りページが迫って来るのに、終わりが見えないとあくせくとページをめくっていましたが、まさかこういう終わりだとは。…だから覚えてないのかと一瞬思いました。怖すぎる。封印したんじゃないかと。この物語はどんな終わりでも納得いかない気がします。だから、こんな終わりなのかもしれません。
■でも、正直。私も跳べるなら跳びたいと思う。たとえそれが幸せじゃなくても。
★★★★☆