裸者と裸者

裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争 (角川文庫)

裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争 (角川文庫)

最近一番のあたり。これは面白い。が、作者の打海文三さんがすでに亡くなっていて、続きが未完で終わっている…と。…ご冥福をお祈りします。天国で続きを読ませてください。作者のブログが残ってました→「打海文三の”パンプキン・ガールズは二度死ぬ”」。
設定は、「コインロッカー・ベイビーズ(上) (講談社文庫)」とか「サウンドトラック 上 (集英社文庫)」とかに似ている。あ、あと「五分後の世界 (幻冬舎文庫)」か。どろどろとした、戦争の日本。そこで生き延びなくてはならない子供。とてもソリッドな内容で読ませます。この文章は良い。好きです。最初はちょっと読みにくいかと思ったけど、慣れればOKでした。短い文章中心の組み立てが緊迫感があって良かったです。
戦争とか少年兵とかセックスとか死とかエグイ話です。でもだから良い。のかな。
主人公の海人のキャラがまず良くてその周りにいる人もまた良い。絶望の中で結局救ってくれるのは人のつながりか、と思わせられます。「上」も「下」も良いけど、私は「上」のほうが好きでした。アナーキーな双子姉妹よりも素直な海人を中心とした少年兵のほうが魅力がある。
しかし、戦争は無益だね…。本当に怖いのは、この話では日本が舞台であるからファンタジーでいられるということかもしれないです。「少年兵 - Wikipedia」や「http://www.ritsumei.ac.jp/acd/ac/kyomu/koudai/kikaku/kensho04/kensho_j/2001/ronbun6.html」や「ウガンダの少年兵写真」。海人は生きる道を見つけられたように見えるが(多くの優しい大人の手を借りて)、ほとんどの少年兵はそうなる前に死んでいった。私にはどうしても戦わなくてはいけない理由が分からない。そしてそこに子供を巻き込む神経はもっと理解し難い。

★★★★★