変身

■変身といってもカフカの変身ではない。カフカのは3ページくらい読んだ記憶がある。「超映画批評『変身』1点(100点満点中)」を読んでどんなに面白いのかと思った東野圭吾の変身です。映画は観ないでしょう。ダメなストーリーやダメな編集なら見ても良いけれど、ダメな演技は見てて辛いので…。

変身 (講談社文庫)

変身 (講談社文庫)

■率直に言うと期待したほどでは無かったが、非常に面白かったです。期待しすぎ。でも読み始め数時間で読み終えてしまったから(私はあまりこういう読み方はしません。ちょっとずつ読みます)、面白いことに間違いは無い。
■かなり怖いです。脳移植の話なのですが、乗っ取られていく恐怖がリアルに書かれていて面白かったです。自分が自分でない何者かに奪われていく、しかも凶暴で信じられないことを繰り返す、これって想像を絶する恐怖です。しかも二重人格とは違って自分であって自分でない、自分が考えていることは間違いないがそれは自分の考えではない。さらにそれはどんどん進行し止めることはできない。切迫した刃の上のような恐怖が見事です。
■期待したほどでは無かった、というのはミステリー的な部分が見え透いてたからというのと、最後の場面で泣けなかったから。あまりにも自分と違うせいか、僕にも俺にも恵にも感情移入できなかったからかなと思います。キーワード的に綺麗に引いた伏線が回収されていく様は上手くできてるけれども、自分がそういう部分を見るほど冷静な内は泣けません。特に引かれているのが伏線っぽいなぁと思ってしまったらダメです…。これでは泣けない。予想を飛び越えるどんでん返しも無かったし。本の読みすぎ?素直じゃない?
■えーと。そーだ、今自分は泣きたい気分なのです。何かボロボロ泣けるような(恋愛物じゃない)本を読んですっきりしたいです。…深い意味はないけれども。
■あ、これを書かねば。この本の主題の一つは自分とは精神とは何なのかというところだと思います。身も蓋も無い言い方をすれば、脳っていうのはつまるところ神経細胞の集合体で意識や思考なんてのは電気信号だそうですが。しかし本当にそれだけでこんなにも色々な人が生まれ色々なことを考えるものなのかとも思います。でも確かに心臓が移植できるなら脳が移植できてもおかしくない気もする。結局はよく分からないのですが興味深いテーマだと思う。最後に医師の記録として書かれている死の定義が怖いです。医学の進歩は(医学だけでは無いですが)もはや信じられないところまで触れつつあり、それぞれの問題に(研究を続けるのか否か)何らかの答えを示さなきゃいけないのでしょう。しかし誰も本当にどんな答えが正しいかわからないということろが…。
★★★☆☆